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経営者の“気づき”を引き出す存在へ―未来会計は「答え」を出す仕事ではなかった

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株式会社RINGS PRO
立石 勇太

平成元年生まれ、秋田市在住。株式会社RINGS PROの執行役員として、税務監査と未来会計業務に従事。「何事も卓越し、何事も楽しむ」という信念のもと、日々の業務に全力を注ぐ。未来会計業務であるMAS監査の展開に力を入れ、現在10件を担当。趣味は写真撮影とポケモンバトル。挑戦と達成の喜びを大切にし、さらなる飛躍を目指している。

税理士の素質があることに気づかされた

Qまず、立石さんのキャリアについてお伺いします。会計業界を志したのはいつ頃になりますか?

中学時代から陸上競技をしており、それを続けるために、陸上競技が強かった秋田の商業高校に進学しました。その当時は会計の道に進みたいとは全く考えていませんでした。しかし、初めて簿記の授業を受けた時、実務的なお金の流れや損益を計算する簿記に強く惹かれました。損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)が繋がり、自分で答え合わせができることに感動したことを今でも覚えています。

はじめは陸上競技を目的に入学しましたが、次第に簿記に夢中になり、授業の内容より先を勉強するほどになりました。その結果、高校卒業までに日商簿記検定2級を取得しました。

高校3年生のとき、簿記の先生に進路を聞かれ、「大学に進学せず経理の仕事に就きたい」と答えました。家庭の事情もあり、進学は諦めていました。しかし、先生から「このまま頑張れば税理士になれる素質があるから勉強を続けた方がいい」と励ましていただきました。これがきっかけで親に相談し、仙台の大原簿記専門学校に進学することになりました。

Q大原に入った後は税法の勉強もスタートされたのでしょうか

税法の勉強を本格的に始めたのは就職後でした。当時の税理士試験は日商簿記1級、全経簿記上級の合格、または専門学校での2年間の履修完了が受験資格でした。そのため、専門学校1年目は日商簿記と全経簿記を勉強し、全経簿記上級に合格しました。2年目から税理士試験の簿記論と財務諸表論を学びました。

Q現在所属されているRINGSさんとの出会いは?

仙台の専門学校に通っていたため、学校の就職斡旋では秋田県の勤務地がなく、自分でハローワークを通じて就職活動を行いました。税理士試験の財務諸表論を受けた日に、ハローワークから武田亨税理士事務所(現在の税理士法人RINGS)を紹介され、面接を経て入職しました。私が入職する1ヶ月前に女性担当者が退職されるタイミングで、幸運にも採用されました。



Q今の職場で税法や会計事務所の仕事に触れることになると思いますが、イメージとの違いなど覚えていますか?

座学と実務のギャップに強く戸惑いました。専門学校では消費税の基本は学んでいましたが、実務では法人税や所得税が中心で、最初は戸惑いました。月次巡回監査を一人前にこなせるようになるまで約3年かかりました。

Q会計事務所の仕事そのものにはギャップは感じませんでしたか?

月次巡回監査でお客様のところへ直接訪問するスタイルには不安を感じました。入職時は、資料を受け取り事務所で決算を組むイメージしかありませんでした。しかし、とても良いお客様に恵まれ、その不安はすぐに解消されました。弊社ではお客様自身で経理を行う「自計化体制」を推奨しています。自計化は早期に会社の現状を把握し、問題点を改善するための体制づくりです。

Q何か会計事務所業務で苦労された点はありましたか?

最初は社長との世代間ギャップに苦労しました。まだ20代前半だったため、社長との会話に何を話せばよいか分からず不安でした。最初は先輩に同行し、話し方や進め方を真似することで徐々に慣れていきました。

ハードルの高さを感じた中で未来会計をもう一度始めた理由

Q当時は未来会計と出会う前で、税理士という仕事のゴール地点を意識しながら仕事をしていた感じですか?

私が入職した当時はまだ未来会計の黎明期でした。弊社の髙橋(株式会社RINGS PRO代表取締役、税理士)と三浦(税理士法人RINGS代表社員税理士)がマンパワーで未来会計を推進していました。しかし、次第に個人の限界が見え始め、未来会計に携わるスタッフを増やしていこうという流れに変わっていきました。その頃、髙橋から「未来会計をやらないか?」と声をかけられたようなのですが、私はあまりよく覚えていないものの、一度断ったそうです。

私自身、「未来会計は月次巡回監査や決算業務よりも上の領域にある質の高い仕事」というイメージを持っていました。そのため、特別な経験や高いスキルを持っていなければ務まらないと、自分で勝手に線引きをしてしまい、自分には未来会計は務まらないと決めつけていたのだと思います。

Q未来会計を始めたのはいつ頃か覚えていますか?

未来会計業務を担当したのは平成26年頃です。まずは所内のMAS監査担当を経て、お客様へのMAS監査へと進みました。

Qその時点では未来会計プランナーとして活躍してみたいという気持ちはありましたか?

平成25年に事故で多額の借金を背負い、「事務所で頑張るしかない」と覚悟を決めました。その頃、武田代表(現税理士法人RINGS代表社員税理士、会長)のご厚意で竹内日祥上人の『経営人間学講座』に参加させていただき、主体性や高い価値観の重要性に気づかせていただきました。この経験を機に事務所の課題を自分の責任と捉え、積極的に取り組むようになりました。その後、自社のMAS監査を通じて自信をつけ、平成28年12月にはMAS監査契約を成約することができました。

未来会計プランナーとしての苦労は税法との考え方のギャップ

Qその後、いよいよ未来会計プランナーとしてお客さまと接していくことになると思いますが、苦労したことや順調に行ったことなど当時のことを聞かせていただけますか?

未来会計は税法と異なり、「答え」がありません。そのギャップに最初は苦労しました。しかしMAS監査研修で、お客様自身に気づきを与えるための『質問力』の重要性を学びました。その後は会議で適切な質問を行い、話を盛り上げることができるようになりました。質問を通じてお客様と共に正しい方向を見出すことが、この仕事の本質であることを理解しました。

支援事例-建築業

Q印象に残っている会社さんがあれば教えていただきたいです。

3年前にMAS監査を受注した地域ナンバーワンの建設会社さんの事例があります。その会社はお父様の時代から土木事業を行っており、土木事業自体は安定していました。しかし、新たに始めた林業部門がうまくいかず、土木事業の利益を食いつぶす状態になっていました。

私たちが関与する前は、社内には会議もなく、報告・連絡・相談もほとんどない状態で、事故や管理上のトラブルが頻発していました。社員を巻き込んで、月に1度のMAS監査会議を3年間継続した結果、社員の会議に対する抵抗感は薄れていきました。また、現場の責任者から現状を報告してもらうことで、当初は「現場主義」の社員からも徐々に会議の意義を理解してもらえるようになりました。情報共有がスムーズになり、社内全体で現場の状況を把握できるようになったことで、良い循環が生まれました。

特に新設した林業部門については、MAS監査会議の前に1時間、進捗確認のための専用会議を設けました。その結果、年内の売上見込みを正確に把握できるようになり、業務効率が向上し、作業を早く完了できる現場も出てくるようになりました。

未来会計プランナーの仕事の醍醐味は、深い関係性で貢献できる喜びを実感できること

Q未来会計プランナーの仕事にはどんな魅力がありますか?

最も大きな魅力は、人との出会いだと思います。もし経理として企業に就職していたら、出会えるのはその会社の人たちだけだったかもしれません。会計事務所にいると税務担当者も様々なお客様と接しますが、特に未来会計に携わっていると、お客様との出会いの密度や深さが違います。

また、会計という立場から企業経営をサポートできることも魅力の一つです。税務だけの仕事と比べても、未来会計プランナーというコンサルタントとしての立場は異なります。会社の数字を扱うため経営者からの相談を受けやすく、深い信頼関係を築くことができます。この良い関係性の中で価値ある仕事ができることが、未来会計プランナーの醍醐味です。

会計業界は、未来のある業界である

Q最後に、業界を志している学生の方、経理の方、あるいは導入を検討している中小企業の方へメッセージがあればお願いします。

10年前、「私たちの仕事はAIに奪われてなくなる」という衝撃的な記事が話題になりました。しかし10年経った現在も、私たちの仕事はなくなっていません。それどころか、DXやChatGPTに代表されるようなAIツールをうまく活用することで、さらなる高付加価値を生み出すことが可能です。

財務の視点から会社の現状をいち早く把握して、より良い会社にしていくマインドは会計事務所ならではです。会計という視点から会社の全体像を俯瞰できる会計人としての立場と、コンサルティングを統合した未来会計プランナーの仕事には大きなやりがいがあります。社長や社員、そして会社に関わる全ての人から感謝される仕事です。

私はこの業界が非常に未来のある業界だと確信しています。ぜひとも一緒に、未来会計の普及を進めていきましょう。


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インタビューをした人
渡邉 駿介